代表メッセージ

若い人に仕事を好きになってもらう環境つくりが会社の役割

代表取締役山口勉代表取締役山口勉

私が先代から会社を引き継いだのは平成2(1990)年です。
それまで先代が個人としてやってこられた事業を引き継いだと同時に法人化しました。従業員数は、社長を除いて 20代が3名、40代が1名、 50代が2名、計6名の陣容です。
人数がかかる仕事などは、同業者からの応援などを得て対応しています。
弊社は町鳶として発展してきた経緯があり、現在では、木造建築の基礎工事、仮設足場、解体、舗装、外構工事などが主体となっています。
会社のある調布市周辺の建設会社、工務店などからの仕事を請け負うことが多くなっていますが、町鳶として、近場の仕事を直接受注することもあります。

従業員の待遇としては、日給月給、賞与は年2回 (6月、12月)を支給しています。
保険制度も導入しています。

普通に仕事ができるようになるまで 3年はかかる

弊社の場合、新入社員は人の紹介などで入社してくるケースが多くなっています。
最初は道具の名前などを覚えながら材料運びなどの補助作業を行い、徐々に現場に慣れるようにしていきます。
弊社の場合、仕事の幅が広く、さまざまな現場で仕事をすることから、覚えなくてはいけないことがたくさんあり、性格などによって個人差はありますが、普通に仕事ができるようになるまでに最低でも3年、さらに経験を積んで現場で臨機応変に対応できるようになるまで5年は必要と私は考えています。

現場で責任がとれるよう になったら一人前

一人前になる目安として、現場で責任がとれるかどうかということがあります。
例えば、材料を仕事の進捗状況などに応じて、自らが計算して現場から発注できるかということです。
そのためには、材料の数量計算が必要で、一人前になるためには、技能・技術の習得に加え、身に付けなければならないことがたくさんあります。
こうした対応ができるようになるためには、それぞれの仕事に対する経験や知識が必要で、会社としては、状況が許せばなるべく同じ現場に配置するようにして、最初から最後まで、責任を持って対応させるようにしています。
そうすることによって、従業員の方もやる気と自覚が出てきます。

職人は、素人にわかりやすく説明できるようになれば一人前

さらに一人前の職人として必要なのは、施主など素人の相手にわかりやすく現場の状態を説明できるようになることです。
この現場ではどのように作業した方が良いのか、どういう工事をした方が施主の意向に沿うのかなど、きちんと説明し、理解、納得してもらう必要があります。
わかりやすく説明するためには、職人自身が仕事の内容をよく理解し、それを裏付ける技能・技術を身に付けておく必要があります。
仕事は、相手のことを考えて親身になって取り組む姿勢が重要です。
こうした対応はいわば営業ですが、現在、私がほとんど一人で行っている営業面の業務についても、将来的には若い従業員にも引き継いでいって欲しいと考えています。

現場と始終業時のミーティングが指導、教育の場

弊社の若手指導、教育の場のほとんどは現場です。
現場では、極力、年輩のベテランと若い者を組ませるようにしています。
先輩は若い者の面倒をみる、世話を焼くというスタイルをとることで、仕事を覚えてもらう体制を整えています。
若手には、なるべく難しい仕事をやらせ、考えさせる。
どうしてもできない場合は、先輩が、いわゆる“仕事の逃げ”を教えていきます。
杓子定規に作業を進めようとしても現場によっては、対応できない場合があります。
総じて若手は、力任せに無理矢理作業を進めようとする傾向がありますが、「力を抜いて逃がすことも必要」というような、現場での対応力や必要な技能や技術を指導していくという形をとっています。
現場以外での指導、教育の場としては、仕事が終わった後、一日の仕事の反省点などを社長、年輩者などを交えて話し合う機会を設けています。
実際の現場での不具合やそれを解決するための方法、最も効率の良い仕事の仕方などを指導しています。
こうした指導、教育は、一日の仕事の段取り等を確認する朝の始業時にも行っています。
業務上、必要な指示が、そのまま指導、教育につながっているという側面もあります。

資格取得を積極的に奨励

弊社では、現場で必要な重機の操作からいわゆる国家資格まで、資格取得には積極的に対応しています。
組合を通じて、作業主任者講習などの講習には一通り参加させるようにしているほか、国家資格の取得を奨励しています。
鳶の仕事に自覚を持って働いている者は自分で夜学に通ってでも取りたいという意欲も強いようです。
弊社でも、20代の従業員の一人が、仕事が終わった後、夜学に通って2級建築士や鳶の1級の資格を取得した従業員がおり、その他の若い従業員も鳶の資格取得に向けて勉強しています。

仕事を好きになってもらう環境づくりが会社の役割

講習などにかかる費用は会社で負担しています。
夜学などの費用については、自己負担が原則となっていますが、従業員の中には始業前の早朝に新聞配達をして夜学の費用を稼ぐなど、自ら積極的に資格取得に向けて努力している人もおり、会社としては大いに期待しています。
若手従業員には、鳶の仕事が好きになり、まっとうして欲しいというのが私の考えです。
そのための環境を整えてやることが会社の役割と認識しており、可能な限りの対応を行っています。

町鳶の伝統を今に引き継ぎ、何でもできる態勢で臨んでいる

弊社では先代の時代から町鳶としてさまざまな仕事に対応してきました。
その伝統と技は健在で、他の専門業者の仕事でも現場の状況に応じて受注することもあります。
そういう意味でどのような仕事にも対応できる状態にありますが、昨今の業務の細分化、専門化に伴い、他の業者を差し置いて仕事することはできない環境にあります。
そういう意味で、受注する立場として仕事は選べない状況にあります。

逆に声が掛かった仕事に対しては、よほどのことが無い限り精一杯対応するという態勢で臨んでいます。
塗装や抜金関係出身の従業員など、さまざまな資格を持った従業員が弊社にはおり、町鳶としての面目躍如たるものがあります。

将来的には大手の業者に仕事が集約されてしまうのではないかという危機感もある反面、現場施工としづ仕事は決して無くならないと考えています。

組合活動など同業者や職人同士の交流を通じて、業界内の発展、向上に務めていきたいと考えています。